語るのは、技術か、それとも生き様か。

vol.03
聖地に残る、実直な旋律。――株式会社中井精密が、大田区で守り続けるモノづくりの「道」
かつて、『加工で困ったら、図面を持って大田区へ行け』と言われた時代がありました。世界に誇る日本のモノづくりの聖地、東京・大田区。しかし今、数々の不況や後継者不足の波に飲まれ、あの賑やかだった工場のシャッターが次々と閉まっています。
そんな変わりゆく聖地の中で、自動旋盤加工機を休ませることなく、今もなお数多くの精密部品を削り出し、実直にモノづくりのバトンを繋ぎ続けている会社があります。株式会社中井精密さん。そこには、技術を超えた、どこまでも謙虚で、どこまでも前向きな『生きざま』がありました
【聖地の記憶と今】 閉じていくシャッターの中で、回り続ける自動旋盤
先代から引き継いだ、大田区の町工場。一歩足を踏み入れれば、小気味いい金属の切削音と、油の匂いが五感を満たします。
かつて大田区は、仲間内の工場が一網打尽に繋がって一つの巨大なシステムのように機能していました。「うちでできないなら、隣のアイツに頼めばいい」。そんな人と人との繋がりが、日本の技術を支えていたのです。
しかし、時代は変わり、仲間たちが次々と廃業していく。そんな寂しさを誰もが抱える中で、中井精密さんは自動旋盤加工機に向き合い続け、日本の産業に不可欠な部品を今日も供給しています。変わらない強さが、そこにはあります。
【紡がれる哲学】 機械の前に立ち、人と話し、道を極める
中井精密の社長の背中を見ていると、モノづくりの「本質」を教えられる気がします。
この道に入り、ひとりで数台の自動旋盤を受け持ち、油にまみれて加工をしながら、同時に営業も、事務もこなす。そんなマルチタスクを「十数年、必死に走り続けてきただけです」と、社長は静かに笑います。
特筆すべきは、ここ数年、ホームページを通じて新しいご縁を自ら引き寄せてきたこと。下請けの殻に閉じこもるのではなく、外の世界と繋がり、多様なニーズに触れることで、自らをアップデートし続けてきたのです。
【社長の言葉(ナラティブ)】 人生半ば、仕事を通して学ぶということ
社長は、自身の歩みをこう振り返ります。
「多くの方の協力があってここまでやってこれました。仕事を通して道を極め、人と話して人を学んでまいりました。個人として仕事に対しては”前向き”に、お客様に対しては”謙虚”に。これが私のモットーです」
この言葉の重み。何台もの機械をひとりで回す孤独な戦いの中で、社長がたどり着いたのは、技術の誇示ではなく、関わる人々への深い「感謝」と、どこまでも貪欲に学び続ける「謙虚さ」でした。
「前向きで、謙虚な背中」に、私たちは日本の未来を見る
最先端の派手なプロダクトを作るわけではないかもしれない。しかし、中井精密さんが大田区で刻み続けている削りのリズムこそが、日本のモノづくりのベースライン(低音)です。
私は、中井精密さんのこの『仕事に対して前向きに、人に対して謙虚に』という生きざまに、深く感動し、大ファンになってしまいました。 大田区の灯を消さない。それは口で言うほど簡単なことではありません。現場を守り、営業をこなし、新しい縁を大切に紡いできた社長の十数年があるからこそ、今の中井精密さんがあります。 chataのビジョンは『日本のモノづくりをもう一度面白い仕事にする』こと。中井精密の社長のように、実直に道を極めようとする人が、一番報われる、一番カッコいいと言われる世の中にしたい。 社長、これからもその背中を追いかけさせてください。そして、その『前向きで謙虚な技術』がもっとたくさんの人に届くよう、chataも一緒に汗をかかせてください!
